2009年01月31日 注記
このSSは2008年10月29日に公開されたものを再録しました。
ストライクウィッチーズ(略してSW)のSSです。
最近、妙にgoogleから「ストライクウィッチーズ SS」というキーワードでやってこられる方が多いと思ってはいました。最近になって気づいたのですが、実はどうも、このブログの「
サーニャ/こころのうた」が検索のトップに表示されているらしいのですね。これは何かのイヤガラセでしょうかw
せっかく訪問していただいたのに、肝心のストライクウィッチーズのSSが一編しかなくて、がっかりされた方も多かったのではないかと思います。それがずっと心に引っかかっていました。
ようやく今日になって新作のイメージが固まったので、さっそく書いてみました、学校でw
なかなかのドキドキ体験でしたよ、ええ。
例によっていちおう解説しておきますと。
今回のSSは普段の彼女のどこか虚無的な態度と、第六話での「奇跡なんかじゃない」発言からいろいろと膨らませてみました。したがって「サーニャ/こころのうた」以上に妄想炸裂状態で、しかも割とダークです。特に前半が。
ご注意ください。
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『エイラ/つばさのうた』
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いつの頃からだろうか。
無傷の撃墜王、などとおだて上げられ、
すっかりいい気になっていた。
敵を墜とせば戦いに勝てる。そう無邪気に信じていた。
おとといは三機、きのうは五機、今日は八機。
おもしろいように戦果をあげた。
だが。
墜としても、墜としても、墜としても。
一向に減る気配のない敵。
一人、また一人と失われる味方。
気づかぬ間に、
疲れと焦りが、
澱のように溜まっていった。
ある日、避難民の行列を見た。
疲れきった大人。
泣き声すら上げられない幼子。
そんな人たちに共通していたのは、
ひとかけらの希望も残されていない、
濁った眼。
数多くの犠牲者。
そしてそれに数倍する、
おびただしい避難民の列、列、列。
なんとかしなければならない、なんとか。
しかし今の私には、その力がない。
それを見てしまったとき、
それに気づいてしまったとき、
自分の翼の折れる音を、私は確かに聞いた。
それからは酒と女に溺れる毎日だった。
最初は心配してくれていた仲間達も、
やがて愛想をつかしていった。
そして私は、サーニャと出会った。
彼女の第一印象。それは、
綺麗な眼。
連想したのは、故郷の蒼い湖。
この瞳だけは絶望で曇らせたくない。そう思った。
彼女と飛ぶごとに、
彼女と言葉を交わすごとに、
彼女と寝食を共にするごとに、
その気持ちは強く、大きく育っていった。
この出会いは、奇跡とかいう奴だろうか。
いや、違う。
全てを傍観している神さま。
何もしない神さま。
無意味な神さま。
くだらない。
神さまなんか信じない。
奇跡なんか必要ない。
戦争。
それは試練。
私に与えられた試練。
人類に与えられた試練。
であるならば、
今の私に必要なもの。
それは、
奇跡なんかじゃない。
神さまなんかじゃない。
今の私に必要なもの。
それは、
信じる心。
折れない心。
くじけない心。
守りたいと願う気持ちが、
人と人との絆が、
力となる。
希望となる。
固い鎖となる。
私を支えてくれる。
仲間を支えてくれる。
地球の五十億年の歴史。
生物の五億年の歴史。
人の百万年の歴史。
進化の果てに到達した、もっとも善き物。
その穢れなき想いがある限り。
私に、
魔女に、
そして人類に、
敗北の文字はないだろう。
いつの頃からだろうか。
折れない翼を私は手に入れていた。
私は守りたかった。
この世界を守りたかった。
サーニャのいてくれる世界を守りたかった。
サーニャが愛している人、モノ、故郷。その全てを守りたかった。
今度こそは、
決して引かない。
決して負けない。
決して退かない。
今の私はひとりではないのだ。
仲間がいてくれる。
サーニャがいてくれる。
だから、飛べる。
だから、戦える。
だから、生きられる。
サーニャの存在に、
どれほど支えられてきたか、
どれほど勇気付けられてきたか、
どれほどなぐさめられてきたか知れない。
だが私はこんな性格だ。
面と向かって礼を言うなんて無理。
なによりそれは私の生き方に反すること。
だから私は心の中でだけつぶやくのだ。
万感の想いをこめた、ただひとことの感謝の言葉を。
サーニャ、ありがとう。
(Fin)
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